ジョン・コラビ #1 夫婦喧嘩の原因はマリリン・マンソン?


今回は元Motley Crue / The Dead daisies 等の活動で知られるボーカリスト、ジョン・コラビがインタビューの中で訊かれた「必聴ロックアルバム5枚」を訳しながらご紹介したいと思います。


いつも飄々と話す印象のジョンが、テンション高めに「愛する5枚の名盤」を語るのですが、チョイスは意外と「どストレート」。



しかし、作品にまつわるエピソードが非常に「らしい」のでご紹介したいと思います(笑)


チャンネルは Talking Wax with Adika Live! さん。


A: アディカさん

J: ジョン・コラビ



① Abby Road / The Beatles 


0:50


J: 語るべきは作曲面やプロダクションだけでなく、特にこのアルバム収録の2曲は、「ボーカリストとしてのポール・マッカートニー」の素晴らしさをオレに気付かせてくれたんだ。



これがリリースされたのは1969年、オレは多分10歳だったはずだ。


その2曲がオレに「歌手になりたい!」と思わせたんだけど、一曲は “Oh! Darling”、もう一曲が “Golden Slumbers” だった。


“Oh! Darling” のブリッジと、“Golden Slumbers” のサビでのポールの歌唱を聴いた時はまさに「腕毛が逆立った」よ。



なぜそれが自分の心にそれほど響いたのかよくわかっていなかったけど、「これこそ、オレが将来やりたいことだ」と思ったんだ。


A: ブルージーで、彼のソウルを感じる歌唱でしたよね。


J: 全くだ。オレはいまだに時々ライブでカバーしてるんだよ。



RATT 在籍時ロビー・クレインと


5:25 


J: オレがRATT でプレイしていた頃、ロビー・クレイン/ Ba. はよくツアーバスの後ろの席でベースの練習をしてたんだ。


彼は大体「このゲディ・リーのプレイ聴いてみろ!」とか「ジョン・ポール・ジョーンズのプレイをちゃんと聴いたことあるか!?」って具合だったんだけど、ある日お気に入りのベーシストを訊かれた時、オレはポール・マッカートニーと答えたんだ。



すると彼は、「は?ポール?」みたいな感じでさ。


オレは言ってやったんだ、


「もしポールが良いベーシストだと思わないなら、後ろのラウンジに行って “Penny Lane” のベースラインを拾ってこい。それで感想を聞かせてくれ」とね。


彼は実際に聴きに行って戻ってくると、「恐れ入った、キミが正しかったよ」だってさ。



要は、「この曲に対してこのベースラインをどうやって思い付いたんだ!?」ということさ。


分けて聴くと違う曲みたいに聞こえるし、さらに言うと、彼はそれを弾きながら歌ったんだぜ?


② Physical Graffiti / Led Zeppelin


7:00


二枚目は決めるのがすごく難しいんだが、オレにとってはこの2枚がLed Zeppelin の象徴なんだ。


“Led Zeppelin IV” はオレをツェッペリンに夢中にさせたアルバムなのに対して、彼らの全ての魅力を閉じ込めた作品としては ”Physical Graffiti” が勝るかな、と思うんだ。



ブルースの要素、 “Kashmir” でのオーケストラアレンジ、アコースティックの曲…ツェッペリンが持っていた音楽的影響力の本質的な部分が詰まっていると思う。



③ Ziggy Stardust / David Bowie


8:45



これもまた収録曲全てが素晴らしい作品で、通して聴いていると「次の曲がどんなタイプか想像がつかない」んだ。


あのクレイジーな髪型に雷⚡マークのメイク、そういったイメージも含め本当に素晴らしかったし、良くない曲が見当たらないんだよな。


このアルバムは今でもオレのスマホに入っているし、間違いなく彼にとっての代表作だ。



“Oh Droogy don’t crash here” とか、歌詞の意味も謎めいていて辞書で調べたものさ。


オレのアコースティックライブでは、このアルバムからもプレイしてるんだ。(といって実際に “Lady Stardust” を弾いて見せる)


ボウイと言えば、彼のドキュメンタリーを観るまで知らなかったんだけど、”Life On Mars?” で鍵盤を弾いてるのは YES のリック・ウェイクマンなんだよな。


(プログレで知られる)彼らから見ても、ボウイのソングライティングはすごく変わっていたらしい。



オレ達が曲を作る時、普通はコード進行がある程度見えてくると、「さぁ、そろそろサビだな」って感じになるんだけど、ボウイの場合は同じコード進行で別の展開をしたり、キーを一つ上げたり、といったことがあちこちで起きてるんだ。


そして、どういうわけかそれが上手く行ってるんだよ。


A: そうですね、彼はどうやって常識を破り、変化を起こし、上手くやるかをちゃんと知っていた、まさに天才でしたね。



元妻とマリリン・マンソン


13:15


J: この一枚にこれ以上多くの時間を割くべきじゃないのはわかってるんだけど、ボウイに関してはまだエピソードがあってね。


オレの二人目の元妻との話だ。


一緒だった頃、彼女はとにかく「マリリン・マンソンがどれだけ天才か」ということをオレにしつこく話してきた。



でも、オレからすれば、彼は特段個性的なことをやってるようには思えなかったわけさ。


すると彼女は怒りだして、「あなたは自分が彼ほどのオリジナリティーを持っていないから嫉妬してるんでしょ!」だってさ。


A: 笑


J: でもさ、現実的に見ていくと、彼がやってることってのは「アリス・クーパーの要素を取り出して、デヴィッド・ボウイとトレント・レズナーの要素と混ぜ合わせた」だけだろ?


(*この言い方!笑。しかも、あながち遠からず…)



これでオレ達は言い合いになったんだけど、それから数ヶ月後だ。


インディーズ系映画のチャンネルで、ジギー・スターダスト期のボウイ最後のコンサートを放送してたんだ。


ちょっと書いて説明するけど(と言ってメモとペンを取り出し、何かを書き出す)、その番組を見ている時に「これだ!」と思ったことがあってね。


マリリン・マンソンのステージに掲げられているバックドロップにこんなマークがあったんだ。



オレがそのボウイの番組を見ている時に目に入ったのが、まさにほぼ同じデザインのロゴが入ったバックドロップだった。


それを見るや否や、オレは元妻を呼び、「見ろ!このステージ見てみろよ!」と言ってやったんだ。


(↓1:18参)


すると彼女は「Holy Sh!t…この人マリリン・マンソンのデザインパクってるじゃないの!」と。


オレはこう返したんだ。


「な、言っただろ?これはマリリン・マンソンのオリジナルじゃない。デヴィッド・ボウイが1972年にやっていたことなんだ。


マンソンはまだオヤジの身体の中で精子として泳いでた頃さ。わかったか、この野郎!」とね。


A: 笑



続く…


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