デズモンド・チャイルド #4 / BonJovi・Bad Nameの制作



超ロングインタビューを断片的にお届けしているコンポーザー、デズモンド・チャイルド。


BonJovi 編のラストは、 "Livin' On A Prayer" と並ぶ大ヒット曲 "You Give Love A Bad Name" 制作の裏話です。


当時の彼らが "Slippery When Wet" に対してどれほどすごい意気込みで挑んでいたかがわかる内容でした。



インタビュアーはマイク・ブランさん。


I: インタビュアー

D: デズモンド



「ロック」にこだわっていたジョン


42:25


I: あなた達が “Livin’ On A Prayer” を書きあげた時、「これはいける!」という感触はありましたか?


以前、ジョンがあの曲について「アルバム収録曲から漏れるところだった」っと話しているのを聴いて、「あんなすごい曲がどうやったらアルバムから漏れるんだ!?」と僕は思ったのですが。



D: 時にアーティストは、彼らに大きく影響するようなイメージを思い描いているものなんだ。


あの当時のジョンは、すごく「ロック」にこだわっていた。


具体的にジョンがどんなアーティストをイメージしていたかはわからないけど、彼を突き動かしていたのは「スタジアムを埋めるようなロックスターになるんだ!」という想いだった。



その観点から見ると、”Livin’ ~” は、ちょっと感傷的過ぎるんだよ、弱々しいというか。


彼らが思い描いていたような「典型的なロックアルバム」のサウンドからは外れていたんだ。



マーケティングとマジック


43:20


彼らはあの時100曲ぐらい書いていたんだけど、よく高校生の子達をライブハウスみたいな場所に集めて、デモを聴かせてリアクションを見てたよ。



その段階でさえジョンはあの曲に対して 「んー、どうかなぁ…」みたいな態度だったから、僕とリッチーは半分本気・半分冗談で膝をついて「もういい加減にしてくれ、とにかく出そう」とジョンにお願いしたんだ。


I: 笑。そして、その結果は歴史に刻まれた、ということですね。


D: プロダクションを手掛けたブルース・フェアバーンとボブ・ロック、彼らがやった仕事はまさにマジックだった。



バンドはバンクーバーに飛んで一緒に作業をし、仕上がったものを僕に送ってくれたんだけど、もう鳥肌ものだったよ、徹頭徹尾どこを聴いてもね。



自分の曲を焼き回した "Bad Name" 


44:10 


I: あなたがあのアルバムで手掛けたもう一つのヒットが、”You Give Love A Bad Name” でした。



私の耳には、(デズモンドが過去に手掛けた)ボニー・タイラーの “If You Were A Woman, I was A Man” の焼きまわしのように聴こえたんですが、あれは意図してそうしたのですか?


D: もちろんさ。ボニーに提供したあの曲は僕が一人で書き上げたんだけど、当時彼女をプロデュースしていたジム・スタインマンから依頼があってね。



*ここから実際に歌いながらの解説


Aメロのメロディはこんな感じで、後ろに流れるフレーズは(マイケル・ジャクソンの) “Billie Jean” みたいな雰囲気だ。


Bメロは、The Policeのイメージだね。



そしてサビ。あのサビのメロディは(Patti Smith の)”Because The Night” だ。


僕が初めてブルース・スプリングスティーンに会った時、「僕のヒットソング全てにインスピレーションを与えてくれてありがとう」とお礼を言ったら彼は笑っていたよ(笑)


(*ハッキリ言うと、曲の元ネタということ・笑)



*この3組が集まるだけでも奇跡ですが、4:05~のブルースのGt.ソロ、特に最高です!



ジョンのビッグスマイル!



D: で、あのボニー・タイラーの曲がリリースされた時、僕は結果にすごくがっかりしたんだ。


だって、「究極の一曲が出来た!」って感じていたからね。あのメロディにはそれぐらいのクオリティがあると自分では思っていた。



ところがリリース後、No.1 になったのはフランスの一か国のみ。


そこで、その二年後、僕はジョン&リッチーとの共作の話が来た時、最初のセッションであの曲の要素を持ち込んだんだ。


僕が “You Give Love A Bad Name” というタイトルを伝えると、ジョンは100億円級の笑顔で嬉しそうに僕の顔を見たよ(笑)



もちろん、その段階であのメロディをボニー・タイラーの楽曲で使ったけれど、ヒットはしなかったということは伝えたよ。


あと、あのAメロの印象的なフレーズをリッチーに説明すると、彼は「それはマイケル・ジャクソンっぽいなぁ。なんかR&Bっぽいよ」と言うから、「いいや、エレキギターでこんな感じで刻んでみろ」と伝えた。


そこでマジックが起きたんだ。


さらには、サビの歌詞「Shot through the heart」ってあるだろ?あれはジョンが大好きだったBonJovi のファーストアルバムの曲が由来だ。



こんな感じで、僕らは自分達が思いつく限りの「ベスト中のベストの要素」をあちこちから拝借して、“You Give Love A Bad Name” を完成させたのさ。


続く…



すごいですよね、「Slippery ~」アルバムに関しては、ここまで「売るんだ!」ということを至上命題に掲げていたとは…


"Bad Name" は売れて当然のクオリティーだと思いますが、ここまでやって売れていなかったら、デズモンドも結構キツかったかもしれませんね(汗)