ボンジョヴィ / "Slippery When Wet" のゴタゴタ劇


今回は単発の記事!


ロックフォトグラファーで、先日 "The Decade That Rocked" という写真集をリリースしたマーク・ワイスさん。


彼が先日受けたインタビューと過去のBonJovi のドキュメンタリーから、 "Slippery When Wet" のアートワークをめぐるゴタゴタ劇をご紹介します。



私もなんとなくは知っていましたが、どういう経緯でアートワークが変更になったのか、今回初めてちゃんと理解出来ました。


*ちなみに、マークさんはどちらの動画でも話しています。


当初はカウボーイのイメージ


VH-1のドキュメンタリー&マークさんの話によると…


Slippery は当初、アルバム自体も "Wanted Dead or Alive"と名付けられる予定で、マークさんによるバンドの写真も、西部劇のガンマンのイメージで撮影が進められたそう。



ところが、カウボーイ文化で育っていないニュージャージー出身の自分達にこのイメージは果たして…?ということになり、そのコンセプトは白紙に。


結局この時撮影したカウボーイ風の写真は後に、"Wanted ~" のシングルに使われたそう。



ところが、2015年カナダメディアのインタビューで、ジョンは…


「オレ達はカウボーイ風のイメージでカナダの炭鉱で撮影を行い、それをレコード会社に提示したんだけど、彼らは『こんなの絶対にダメだ!』と。


なぜアルバム2枚を出した後で、急に山男みたいになる必要が?と言われたんだ」



と発言しており、自分達で提示したカウボーイ的なコンセプトがレコード会社に拒否されて作り直し… というのが真相なのかもしれませんね。

 


有名なストリップクラブの話


1:15 ~


ブルース・フェアバーン指揮のもと、カナダのバンクーバーでレコーディングをしていたBonJovi 。



街にあった No.5 というストリップクラブに遊びにいき、そこでマネージャーのドク・マギーが "Slippery When Wet" =「床が濡れてる時は滑りやすいのでご注意を」というサインを目にしたそう。


ここ、動画内でリッチーが活き活きと語っているのですが(汗)、どうやらそのお店では美しい金髪の女性ストリップダンサーが石鹸の泡まみれになって歩くような演出があったそうで、それを目にした時にメンバー同士が「なるほど、こりゃ確かに滑りやすいわけだ…」と妙に納得し、「タイトルはこれだ!」となったそう(笑)



コンセプト見直し


1:45


タイトルを変更した彼らは、新たな写真撮影のためにマークを地元ニュージャージーに呼び、地元のビーチへ。


リッチー曰く「フォトグラファーがビーチを歩きながら『ねぇ、アルバムのジャケットのモデルになってみない?』と勧誘して歩いて回ったのさ」



その中で特に目立ったアンジェラという地元の女の子をフィーチャーして撮影されたのが、あの有名な「セクシージャケット」です。



次々と問題が…



無事、正式なアートワークが決まったかのように思えたところでまた問題が発生します。


なんとレコード会社はマークが撮影したアンジェラの写真に、よりにもよってド派手なピンクのフレームを採用したのです。



先のカナダのインタビューでジョンは、「こんなピンクのアルバムジャケットを出したら、オレ達のキャリアはそこで終わりだ!」と猛反対したそう。


ところが、既にこのデザインである程度印刷工程が進んでおり、最終的には日本盤の多くはこちらでリリースされることに。



2つ目の問題はアメリカ国内の事情。


当時CD・レコードの売上に非常に大きな力を持っていたCDショップや大手スーパーマーケットチェーンは、こういうセクシーなジャケットを拒否する可能性が高く、レコード会社としても急いで代替案を模索する必要があったそう。


*っていうか、あのデザインを見れば最初から想像出来たでしょうに…笑



そしてたどり着いたのが…


ジョン(バンド側)はピンクジャケが嫌、レコード会社は何としても小売店で売りたい。


しかし、こんな状況の中でも当然締め切りはやってきます。


VH-1 のドキュメンタリーによると、「明日までに新たなアートワークが無ければ、アルバムのリリースは延期だ」と告げられたジョン。



再び地元ニュージャージーのスタジオでマークさんと合流し、ギリギリ急いで撮影されたのがあの「素っ気ない黒いジャケット」でした。


黒いゴミ袋に水をスプレーし、そこに指で書かれた "Slippery When Wet" の文字。メンバーの姿すら写っていません。



しかし、この地味なアートワークとは関係なく、 "Livin' on a prayer" や "Bad name" が特大ヒットとなり、最終的には2800万枚を全世界で売り上げます。



ちなみに…


例のピンクフレームのセクシージャケットは、当初日本で30万枚が販売され、刷り上がっていた50万枚分のアートワークが、出荷されることなくマーキュリーレコードの手によって処分されたそうです…



いや、2800万枚売れたから笑えるけども!!(汗)